多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

タヌキのその後

それから次の日も、またいるかなあと思っては自転車を止めて子ダヌキの影を探しました。ちょっと奥まった茂みにやはり二,三匹いるようです。一匹は見えるところで土を掘り起こしながらなにか獲物を捕らえようとしています。虫かミミズでもいるのでしょうか。

目を凝らして注意深く見ていると、茂みの奥の方に大きいのがいます。親ダヌキでしょうか、子供たちの行動を監視しているようです。

少し気になってネットで色々調べてみました。案外、都会の生活に適応したタヌキが多くなっているようで、大阪市内でも長居公園で確認されたということです。

それから、あの忌まわしい台風が日本を襲いました。不思議な動きで太平洋上を迷走し、強い勢力を保ったまま東北地方に太平洋側から上陸するといった史上初といわれる台風が、岩手県や北海道に多くの犠牲者と甚大な被害を及ぼしました。関西地方でも一日中強い雨が振り続け、増水する大和川を見て、あのタヌキたちは大丈夫かなと思いました。ちゃんとに逃げているかなあと心配になりました。

仕事を終えてレインウェアに着替えて、子ダヌキ遭遇スポットに行ってみようと思ったのですが、近づけない。

赤い回転灯があちこちで回っている。何かあったのか。事件か?。救急車が道路の真ん中に車両の通行を阻むように車線をまたぐように横向きに停車している。消防車4台が待機している。警官や消防隊員が多く集まっていて堤防の上で照明が焚かれている。堤防には上がれないように黄色いテープが貼られ、下の車道を通るように促されます。騒然として何事かといった雰囲気の中、搖動されるがまま渋々遭遇スポットから遠ざかざるを得なかった次第です。

恐らく、河川の増水で危険水位に達するかもしれないということで不測の事態に備えての出動のようです。(たぶんそうだと思う)それと、危ないから人が近づかないようにということもあるのでしょう。てっきり、何者かによって子ダヌキが殺傷されてそれを現場検証しているのかと一瞬勘違いしてしまいました。しかし、あの増水でタヌキ一家はどうなったのかわかりません。

台風の被害が次々に報道されて死亡者は増えていく一方、大和川はいつのもの表情に戻っていきます。

それから数日後、いました。子ダヌキ。
でも、一匹しかいません。
これだけは生き残ったのか、みんな無事でどこかで餌探ししているのかわわかりませんが、一匹の生存は確認できました。