多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

海を渡るアサギマダラ

美術館で絵画展があったので鑑賞後、夕飯までまだ時間があるし少し寄り道をと思い、茶臼山界隈を散策。最近はすっかり陽が短くなり、もう薄暗くなっていているし少し小雨も降ってきたようです。そんな中、池の畔を歩いていると茂みの中に美しい翅を持つ蝶が力尽きている。昔何処かで見たことがあるようなマダラチョウのようです。

大きさはアゲハチョウぐらいで蝶としては比較的大型です。翅はよく見ると半透明です。写真でも葉が透けて見えているのがわかります。実に美しい。

家に帰り、ポケット版の学研の昆虫図鑑で調べてみました。名前はアサギマダラとあり、季節は5〜11月にみることができ、全国に分布し、幼虫や蛹の形態で越冬すると箇条書きで書かれています。なるほど、成虫の季節も終わり命をつなぎ、その役割を真っ当に果たしたのだ。

で、終わるはずだったのですが、このアゲハチョウとはまた違った美しさを持つこの蝶。その生態にもう一歩踏み込んで調べてみようと思ったのです。

インターネットでアサギマダラについて検索をかけると大変興味深い生態について、あらゆるサイトで触れられています。

アサギマダラは他の蝶に比べて、その生態の詳細が解明されていない、たいへん謎に包まれているようです。なにより「旅をする蝶」として知られていて、まるで渡り鳥のように1000kmから2000kmもの長い距離を飛び季節を移動する習性を持つ集団が多く存在するようなのです。多く存在する、というのは、すべてのアサギマダラの個体が、その想像を絶する長距離を渡たるわけではないようです。

ちょうど今の時期だと、日本の本州の標高の高い涼しい地域で夏を過ごした後に南下がはじまりだす頃のようで、最終的に海を超えて南西諸島や台湾まで達する個体も確認されているようです。そんなことは図鑑では触れられていない。初めてそんな蝶がいることを知りました。

現在、アサギマダラが日本に滞在している時期に捕獲して翅にマーキングを施し、そして再び放ったのちに次なる捕獲者がインターネットを通じて情報交換をする。そうやって移動ルートや飛来先などの行動パターンを解き明かそう、といった試みが行われているようです。大変興味深い話です。

いろいろ調べてみてわかったのは移動調査開始や報告の年度や調査団体の発足時期は、いずれも1980年代からのようです。そういった集団移動の生態が知られるようになったのは、この三十年前ぐらいの最近ということになります。

私が昨日見つけた亡骸は翅は少し損傷して破れていましたがマーキングは無かったです。しかし、長い旅の途中で息絶えたのかと思うと残念です。わずか数ヶ月の儚い命にも関わらず、数日後には健気にも大海原を羽ばたき目的地に向かっていたかもしれない、と思うのです。