都会の夜の漁
毎年この時期の恒例、大和川のシラスウナギ漁が先週から始まっています。
ランプで川面を照らし、ウナギの稚魚が光に集まる習性を利用してすくい獲るそうです。暗闇の中に灯るランプの灯りが、星の輝きのようにとても綺麗で幻想的な風景です。そんな灯がぽつりぽつりと対岸にもいくつも見えます。
最初は何をやっているのかわからなかったのですが、何か夜釣りのような漁だろうということは予想にたやすかったです。では何を獲っているのかというとわからない。時期は決まっていて2月から3月にかけての寒い時期で、期間は数週間のみ。他の季節に見たことはありません。
ここは大和川の北側のサイクルロードですが、通常は車が出入りできないように鍵がかかっています。そこに、この時期に限って鍵を開けて車を乗り入れているのを見て、漁業関係者の方が来て漁をしているのだ。それもシラスウナギ漁だということを知りました。
最初は都会の真ん中のこの川でウナギが獲れるなんて、にわかに信じられなかったものです。
シラスウナギとは、ウナギの稚魚のことで全長5センチほどの細長く透き通った体をしています。ウナギの人工ふ化は非常に困難とされていて、官民を挙げて研究が行われていますが、現在でも主流はというと、こうやって天然のシラスウナギを捕獲して養殖するそうです。
回遊魚としてウナギの生態については長らくの間謎とされていました。その謎が明らかになったのは2009年のこと。日本から遥か遠く2000kmも離れたマリアナ諸島西の深海で産卵していることが明らかになりました。その後ふ化した稚魚は海流にのり再び日本に戻り、海から川へと遡上して成熟するまで過ごすそうです。今ここで獲られているシラスウナギは海から帰ってきた稚魚をとっているということになります。十数年前までは謎だっただなんて、日本の食文化を飾る食材なのに意外です。
ここで獲られたウナギの稚魚は養殖業社に引き渡されるそうです。大変希少性が高く、高値で取引されるといいます。したがって漁業権を持った組合員以外が漁をすることは法律に基づきかたく禁止されているといいます。
他府県でもうなぎ資源の保護のため、密漁の罰則の強化や乱獲を防ぐため法整備をし、漁をする期間や漁獲量もコントロールしている。継続可能な安定供給のための取り組みが行われているおかげで、こうして我々日本の多彩な食文化のひとつとして「鰻」があるのだと、この漁を通して学ぶことができました。
ちなみに、私は休日の昼食に鰻重を冷たいビールで一杯やるのが大好きです。