多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

真夜中ギター

9月に入ってからというもの、それまで比較的落ち着いていた設計の仕事が急に忙しくなりだして、だんだん帰宅時間が遅くなっていった。とは言っても毎日欠かす事なくギターの練習に挑んでいる。いくら疲れてていても最低でも1時間、多くて2時間は練習をしている。それ以上弾いていると貴重な睡眠時間を削ることになるので程々にしている。

夜も涼しくなって、ひっそりと家族が寝静まったリビングでビール飲みながらほろ酔い気分でフラメンコギターを弾く。なかなかいいもので、嫌な事も忘れるしストレス解消。・・・と、言いたい所だが楽器練習特有の問題の壁にぶち当たる。そう、音が大き過ぎるのだ。

今までは生音の比較的小さいエレアコでソフトタッチでピック弾きしていたので、特に問題を感じなかった。しかしどうだろう。夜中の午前零時に全開でのラスゲアードは爆音以外の何者でもない。スケール練習も小さな音でやっていては、大きく奇麗な音を出す習慣が出来ないのではないだろうか。実際、休日の昼間に弾いても、いつまで経っても技術の向上が感じられない理由の一つなのかもしれない。

この数ヶ月間どっぷりフラメンコギターに浸ってみて、予想以上に奥が深くマッチョでフィジカルな楽器だと認識させられた、というのが感想である。少しかじる程度のつもりだったが全く歯が立たない。どこかのサイトで見かけたが、クラシックの基本がしっかり出来た人でも10年掛かると言われている。基本がいい加減でフィーリングでずっと好きにやって来た僕にとっては難攻不落のフラメンコ。

だからこそ、毎日しっかり基本を押さえた練習が必須条件だと気づく。音量を気にして弱いタッチでは練習にならぬと結論が出た。そこで、音を消音するとこに着目して様々な検討、実験を試みる事にした。

まず考えたのがサイレントギターの購入検討。ヤマハとアリアから深夜練習用のサイレントギターが販売されている。共鳴胴(ボディ)がなくてギターの形のフレームのみ。ピッックアップ内蔵しているのでヘッドフォンも使える。日本の住宅事情を良く理解した画期的な楽器である。しかし、ゴルペの練習が難しそうで、薄っぺらいフレームだけなのが気になる。それに結構いい値段なので却下!

次は楽器屋さんで手に入る安価な消音器。ゴム製のもので弦を挟むスリット(溝)が切ってありブリッジ近くでセットし、弦の振動そのものをミュートするのだ。簡単にセット出来るので取り外しは容易だが、音そのものが全く別の音になる。その変な音を表面板が共鳴するので音量も期待した以上に抑えられない。何を弾いているのか、ちゃんと引けているのか全くわからない。ギターを弾いている気分にならないので却下!。

原点に戻ってタオル作戦その1。タオルをブリッジ付近の表面板と弦の間に通してみる。これは完全ミュートされるのでポコポコと全く音が出ない。という事は音が出ないので、指使いやラスゲアード練習では使えるが曲練習は不可能。これなら左手ミュートも同じ事だと思うので却下!。

めげずにタオル作戦その2。タオルをボディ内に詰め込めるだけ詰め込んでみた。ボディの共鳴をミュートするので胴鳴りを少し押さえる事ができた。これは効果あり。やってみて気づいたが、かなりのタオルを詰め込んでも結構鳴るものだと思った。ぎゅうぎゅう詰めるとき内部のブレース(力木)が外れないか心配だった。効果を確認してタオルを取り出すのも注意を払った。クラシック系のギターは一本しか持っていないので、この作業を毎週末に繰り返すのはどうかと思う。ブレース外れるのも嫌だし出し入れが面倒なので却下!・・・でも効果ありなので期待出来そう。

今度はサウンドホールを厚紙でカバーしてみた。厚紙を丸く切り抜いてサウンドホールにマスキングテープで貼ってみた。これも効果を感じる。中にタオル詰め込むより簡単にボリュームダウンする。ギターってやっぱりここから音が出てるんだなって改めて感じさせられた。ただ見た目が治療中の患者みたいで痛々しい。却下!・・・いや、もうひとがんばり。

最後は市販のサウンドホールカバーを試す。ヤマハのゴム製のしっかりしたもので、装着も弦を緩めずセット出来るので簡単だ。効果もしっかり感じられる。胴鳴りが押さえられて弦鳴りが強調され締まった音色になる。ルックスも黒いゴムなので違和感無くかなりいい。ネット販売で630円だったので大変満足。

ここまで試すと色々な事が解り出し面白かった。これまで試した事をふまえて、今のギターに消音を施すのではなく練習用の安い中古を探して「真夜中ギター」を一本作る事にした。

ヤフオクで千円程度でクラシックギターが多数出品されているので探すのには苦労はしないようだ。しかし、顔も知らない人の家の押し入れに数十年しまわれた楽器って少し抵抗がある。写真を観てもそれなりに汚れて状態も期待出来ない「粗大ゴミ」に限りなく近いものをわざわざオークション取引するのも気が引けるというものだ。少し価格のハードルを上げた方がいい気になってくる。

そこで楽器屋さんの中古で良さそうなのがあったので購入した。値段は9千円でまあ充分に安い。状態が思いのほか良くて、傷は擦れ程度で全くないし作りも値段の割にいい感じだった。リペア済みという事でナットの調整やフレットのバリ取りと磨きがされているでそのまま使えた。ルーマニア製の安価なスパニッシュモデルのようで、弦高下げるとかなりフラメンコに近い軽く明るい音になる。トップはスプルース単板。サイドとバックはメイプル単板を茶色に塗装してある。いい買い物をした。

早速、ブリッジ調整とゴルペ板貼付け、ネックサイドのポジションマークを塗りつぶし(これがあるとかえって紛らわしい)手を加える。ここからが今回の本当の目的で消音効果をがあったものを試してみる。内部にたっぷりタオルを詰め込む。お気楽なので心配いらず。で、あとはゴム製のサウンドホールカバーで塞ぐだけ。

1ヶ月以上の試行錯誤を重ね、かなりの消音効果が得られた夜間練習専用ギター「真夜中ギター」の堂々完成。ヘッドに暗い真夜中でも(笑)視認性がいいLED付きチューニングメータとカポタスト装着でルックスもばっちり。(←僕にとってココが重要)

しばらくは仕事で遅くなる日々が続きそうなので、これでアポヤンドとピカード、ラスゲアードの練習に励める。嬉しい限りである。実際に真夜中にラスゲアードするとかなりストレス解消になり、気分がすっきりする。

久しぶりのブログ更新で長文にかなり疲れた。