多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

静寂という名のギター

色々迷ったが結局サイレントギターを購入した。
以前中古のHOLAという安いスパニッシュモデルを消音改造したものを真夜中ギターとして練習していたが、音量的に限界でやかましいと感じていた。一般家庭に置けるフラメンコギターのラスゲアードなんて爆音に等しい。胴の共鳴をいくら抑えたとしても、共鳴胴そのものが無い構造にはかなわない。本当に静かだ。今までギターという楽器の価値基準でもあった生音の「音量」や「音色」をまったく逆説のコンセプトである「鳴らない」ことに意味を持たせ、使用目的を限定し何の為のギターなのかはっきりと提示している。これで深夜の練習や住宅事情など気にせず、いつでも何処でもギターを演奏することが出来る訳だ。2001年に発売されて既にヒット商品になってしまっているので今更という感じだが私なりにレビューしてみる事にする。

ボディサイズは通常のギターと殆ど変わらない。共鳴胴が無くギターの形状をした取り外し式フレームだけになっている。斬新だが決して奇を衒っていないデザインもいいし、木の質感をうまく使い高級感もある。ボディの厚さは無いが抱えた時の違和感は殆どなく、ヘッドとボディの重量のバランスもとれているし、全体の重量もクラシックギターと同じぐらい。

フィンガーレストはゴルペの代用になる。これはかなりポイント高い。取り付けの部分はスリット(長穴)が切ってあるので前後にスライドできるので好みの位置にセット出来る配慮。6弦側にもあるといいのだが、ヤマハさんオプション展開してくれませんか?。(現在自作も思案している。)

ヘッドは可愛らしく小さい。ペグも思ったよりいいものが使われている。ナット幅が52mm、弦長550mmと一般的なクラシックギターと同仕様なので、これも違和感がない。ネックサイドにはポジションマークは付いていたが塗りつぶした。あれがあるとかえってヤヤコシイ。下部フレームの形状がカッタウェイのようになっているのでハイポジションが簡単に弾けてしまうのが良いのか悪いのか。上部のフレームと同じ形状の下部フレームのオプション展開が・・・。(自作・・・。無理か)

生音での弾いてみると予想以上に音は小さい。ソリッドボディのエレアコ(バスカリーノ)を持っているがそれよりも確実に静かだ。エレキギターもそうだが、ソリッドボディでも充分弦は響いて木が鳴っているものだ。テレビを見ながら家族の団らんの中、指慣らしのクロマッチック・スケールやスラーが出来るぐらいだ。

電気系統は「VOLUME」と「BASS」、「TREBLE」。リバーブが内蔵していて「OFF」、「1」、「2」の3段。入出力は「LINE OUT」と「AUX IN」がありINにiPodメトロノームなど入力用途は色々考えられる。ギターの音色もとてもナチュラルでピエゾ特有のライン臭さもあまり感じない。とはいえ、あくまでもラインの音だ。生音の静寂性とは裏腹に演奏者はヘッドフォンでリバーブ掛ければかなり悦に浸れる。楽しい楽器だ。ヘッドフォンも最近iPod用などの1m程度の短いものでも十分届くし邪魔にならない。電源は9Vの乾電池か付属のアダプターで供給する。

通常のクラシックギターの演奏性を保ちつつ音量は従来の1/10を実現した、今までに無かった新しいコンセプトのギター。ヤマハのサイトにサイレントギターを開発設計された方のインタビュー記事があって、なかなか興味深い内容だった。決して僕はヤマハの回し者ではないが、仕事で夜遅い帰宅でギターが好きな方には一本は持っていて損は無いと思う。弦をつま弾くだけで気分転換になったり、かき鳴らしてストレス解消もよし。おすすめのギターだ。

知人に今回のサイレントギター購入を自慢していたら、「かなりよさそうですね、僕も買おうかなあ。」と。僕は買え買えと言っている。
「二人でサイレントギター・デュオって面白くない?。お互いのラインアウトをAUXインしあって、ヘッドフォンでモニタリング(笑)。音は全く鳴っていないんだけど、二人は有線で繋がって恍惚の表情(笑)。人には見せられないねえ。(笑笑)
と、知人に冗談言ったりしている。