多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

カワズザクラ(河津桜)

休みだというのに頑張って休日出勤です。これで二週連続。

いつもは8時に事務所に入るように家を出ますが、今日は始業時刻に間に合えばいいと思い、少しゆっくりと朝のひとときを過ごします。いつもより20分遅く家を出る。ただそれだけで随分気持ちが軽くなって、心やわらいで落ち着く気がして不思議なものです。この20分が「あわただしさ」という名の質量なのでしょう。

仕事先の敷地の一角にある、竣工記念に植樹された6本のカワヅザクラ河津桜)が、今枝いっぱいに花を咲かせています。

一枚目の写真は前日、iPhoneで撮影しました。朝陽に透ける花びらがきらきらと輝いて、毎朝心なごませてくれてます。毎日こうやって撮影して、少しずつ開花していく咲きほころんでいく様子を「朝のお楽しみ」にしていますが、いまが一番の見頃ではないでしょうか。

このあたりはもともとは海だったところを埋め立てて工業地帯としたもので、製鉄所や大手メーカーの液晶ディスプレイや太陽発電用パネルのなど大きな工場が立ち並ぶところです。そんな広大で殺風景な工場群の中に可憐な花が静かに咲ているのです。


まるで目に見えない境界線があって他とは一線を画し、「いま」この特別な「ここ」だけはのどかな春に満ちているかのようです。


釣鐘状の一重の花びらを垂らし、緋色の萼(がく)が鮮やかです。メジロがたくさん集まって蜜を吸っていましたが、気配に気づかれ飛び立っていってしまいました。

iPhoneの写真フォルダを探ると2月の初めには大きな蕾をもたげ、少しずつ咲きほころびはじめ、下旬にはすでに三分咲きくらいの状態だったことがわかります。開花して随分と日にちが経ちますが、一般的なソメイヨシノに比べるとなかなか散ることなく長期間花を楽しめます。散らない先からもう葉が出てきています。

まだまだ冷たい季節風が吹く中、濃桃色のうつむき加減に開かれた花びらが揺れているのを見ると、まだ春の訪れは少し先のようです。