多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

ハチに似たスズメガに似た何か

見つけたいものがあって、ここ最近毎週のように訪れる植物園。今、コスモスが見頃を迎えています。
横からのアングルで眺めていると銀河がいくつも浮かんだ小宇宙のようでもあります。

きれいだなあと眺めていると、コスモス畑の脇に雑草が生えている。そこに咲く小さなピンクの花に何かが羽音を響かせて飛んでいる。なんだろう。

スズメガの仲間が忙しそうにホトケノザの蜜を吸っています。高速で羽ばたきをして静止して飛びながら。とても長い口を伸ばし、その中から更に長い管を出し入れし、蛇の鎌首のような筒状に伸びた花びらの奥に向けて、そのストローで吸っています。

このような長いストローを持たない昆虫はこの花の蜜にありつけないということでしょう。こんなことさえ、密接に関係の深い生物同士がお互いに影響を受けながら進化を遂げた共進化現象なのかな、と考えるのです。だから、咲き誇るコスモスには全く目もくれない。

子供の頃よくやった遊びで、ホトケノザのこのピンクの可愛い花を抜き取り舐めてみると実際に甘い。まさしくこの甘さをここにいるスズメガは味わっているということで、味覚として「甘い」共通の認識をこの昆虫と共有しているということでしょうか。

そういえば小学校の中学年頃だったでしょうか、庭に鮮やかに赤く咲くサルビアの筒状の花を、すっと引き抜いて甘い蜜を舐めていたのを思い出しました。私がつまんだ花だけが歯抜けになっていて不自然で家族にばれないか少し心配でした。ホトケノザサルビアも同じように長い筒状の花弁を持っていて、同じシソ科の植物のようです。

話を戻しますが、このスズメガは図鑑によると「ホシホウジャク」というそうです。田舎で虫と戯れている子供の頃によく遭遇する虫で決して珍しいわではありません。よく見かけたのは、同じスズメガの仲間でオオスカシバという蛾というのにもかかわらず翅が透明。しかし、ブーンという羽ばたきの速度と大きさから本能的に蜂だと思い、実は今日も驚いて一瞬身を引いたぐらいよく似ています。このスズメガ、名前も「星蜂雀」と書くそうなので、やはり人間の目から見てファーストインプレッションとしては「蜂」という共通の認識ということで、どうやら間違いないようです。

そんな一連の吸蜜行動を観察しながら、私には蜂以外にもうひとつ似たような生物を連想するのに気づきました。翅の残像が見えないぐらい超高速で羽ばたてホバリングし、長いストローで蜜を吸いながら花を渡っていく・・・。

そう、どうみてもこれはハチドリ。(注1.)深い筒状の花の蜜を好む食性や超高速ホバリングしながら吸蜜する特徴など、非常に共通点が多いことに気づきました。実際に飛ぶハチドリは見たことないですが、「蜂鳥」と書くのですから、恐らくこれぐらいの大きさでしょう。体を覆う羽毛の美しさは圧倒的にハチドリに軍配が上がるところですが、それは少し一旦保留にしておきましょう。

収斂進化。生活環境や生態学的地位等による進化で、本来は系統は全く違う動植物が、同じような身体的特徴が現れる現象のことをいう。例えばイルカとサメとか、アルマジロセンザンコウなど。これもそうゆうことなのでしょうか。興味深いです。

また、長いストロー状の口吻もアリクイの舌と形状や動作も似ているように思います。構造は違うようですが。

名前の「星蜂雀」の「雀」の部分がハチドリということで妙に納得しています。



注1.写真はハチドリではありません。これも先に同じく甘い物好きで、たわわに実った美味しそうなカリンの果実を今まさについばんでやろうと企みつつ、かわいい白いアイリングで無表情を装っているメジロです。実はカリンは甘くない。