多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

jondo grande

ついにタランタの楽譜の最後まで譜読みが終了し暗譜が完了した。曲を聴く限りでは全くどう弾いているのか聴き取れなかったので、音源と楽譜と併用して進めていた。長い道のりだったが、これでうまく弾けるという訳ではなく「とりあえず音符を覚えた」というだけだ。

楽譜は16ページにも及び、そのほとんどが16分音符で構成されており、恐らく子供の頃からギターを初めてから最も情報量が多い曲だった事に気づく。40歳を過ぎて若いときに比べ随分記憶力が落ちてきているのと、聴こえた通りに自分のギターから音が出るまで多くの時間を要し、気がつけば半年かかっていた。

このタランタは鉱夫達の嘆きの唄だそうで、きっちりとしたリズムが無く楽譜にも一切小節割がされていない自由形式だ。一見16分音符の羅列でも実はかなり速いスピードの装飾音の部分が混ざっていたり、スラー(ハンマリングオン、プリングオフ、トリル)が入る特有のトーンで演奏されているので音源をよく聴かないと理解に苦しむ。それに独特の「ため」とか、加速しながら一気に駆け上がるとか、テンポと強弱の変化が難しい。

でもそこに、この曲に込められた人間の喜怒哀楽の感情表現やフラメンコ芸術の奥深さを少し垣間見ることが出来た気がする。そんな深い雰囲気をホンド グランテ【jondo grande(深く大きい)】というそうだ。まだまだこの曲を弾きこなす為の演奏技術に達していないのが現状だが、さあ、ここからが本番だ。この曲を最後まで表情豊かに弾けるようになるのはいつの事だろうか。そして、ギター通してフラメンコに触れることで自分の世界を少しでも広げるため、更に高い志を胸に取り組んでいきたい。


今日の一枚。夕暮れに面白い雲が見えたので撮影。