多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

朝のラジオ体操

 今年の夏も暑い。35℃以上の猛暑日がもう何日続いていることやら。事務所の慰安旅行ということで今年の5月下旬に北京に行ったのだ、何故か滞在した4日間だけ33℃以上の異常な気温で驚いたものだ。あれから2ヶ月。今年2回目の夏みたいというか、あれからずうっと暑さが続いているような気もする。

 でも今年は湿度が低いというか凌ぎやすい感じがするのは自分だけだろうか。空が青いというか雲が白いというか。当たり前の事なのだが、カメラで言うとコントラストが1段、いや2段近く例年より上げた印象を受ける。そう、空を見ていると綺麗なのだ。

 実は今年に入って運動不足解消や肩こりの軽減が目的で新習慣を始めた効果がようやく現れだしてきているのかもしれない。人は人である以前に動物であるわけで、体を動かさないと色々駄目ってことに気づいたのが今年の初めの1月。それと、狭心症の予防対策という意味も含んでいる。

 自分にとって体を動かさないというのは本来スポーツマンでは無いという事と、仕事柄という事がまずあるのではないだろうか。中学高校と放課後の部活動はテニスをやっていたが決して好きでやっているという訳ではなく、どちらかと言えば運動部に所属して精神と肉体を鍛えてない奴らは云々…、といった風潮が何処と無く当時はあったから仕方なくという感じで始めた。実際、体力的に相当きつかったし先輩たちは怖かったし、顧問の先生に対して何度死んでくれと思ったかわからない。でも、結果的に夢中になったし鍛えられたし友達も沢山できたし、いい思い出ばかりだった。しかし、運動するといった状況がなくなってしまうと改めて自発的にスポーツに興ずるということはまず選択しない。言うと面倒くさいということだ。

 仕事はというと椅子に座りっぱなしの仕事で、早いものでこの業界に入って24年経つ。要するに体を動かさないし、納期とか予算や、技術的あるいは確認不足による設計ミスとかストレスが溜まりやすい。慢性的な肩こりが酷くて頭痛を誘発するときもある。当然、クライアントあっての仕事なので無理も言われるが、基本担当しているクライアントは理解がある方でとても助けられている。とは言え、真剣勝負で向き合う緊張感を常に強いられる厳しい関係性という意味では、どのクライアントさんも同じ訳で決して手を抜けるわけがない。

 設計事務所の仕事っていうのは言うとサービス業で、そのサービスたる内容はと言うと、設計計算書やら構想図から始まって計画図や部品図やモデリングデータなどを創る技術なわけで、必然的に椅子の上に固定して長時間とはいえ限られた時間内に何らかの物を造り上げて、それを売り続けなければいけない。武闘派設計士とか体育会系3Dモデラーとか無理なわけだから、何とか体を動かすといった事を無理にでも1日に組み込む必要があるはずだ。そもそも、座り続ける体力が無いので疲れるのかもしれない。

 じゃあ、考えよう。体を動かして運動すると脳の体の運動をつかさどる部位が当然活性化するはずだし、それが脳の他の部位にだって良い意味で影響を受ける。ジョギングなんかは海馬あたりの一時記憶をつかさどる部位を刺激するようで、結果的に記憶色が増したり処理速度が上がるのがわかっている。そういった有酸素運動が心肺機能を高めより多くの酸素を確保できるので脳や体の老化速度を抑える、とかなんとか。そんなことを考えていた。

 人間、体を動かさないから筋肉が硬くなって肩こりとか色々不具合が出てくるわけで、1日10時間も座ったまま同じ体勢で固定して体にい良い事あるはずがないのは、ちょっと考えれば分かりそうな事なのだが。(知っていると気付くっていうのは違うものなのかもしれない。)

 ちなみに、何かの人体に関する雑学の本で読んだんだと思うが、人間の体で使わないとすぐに衰えてしまうものがあるようで、使わないものを退化せせてしまうそうだ。

  1. 脳の働き
  2. 胃腸の働き
  3. 筋肉量

お年寄りが何処から衰えていくか考えると納得できる。

 話はそれたが、同じ姿勢をとり続けると血行が悪くなる、あるいは筋力と心肺機能の低下。するとどうなるだろうか。体のバランスが崩れ、代謝系とか免疫系やその延長線上にある精神にも当然影響が及ぶと考えられないだろうか。それで食欲が落ちて消化器系の機能不全で栄養分吸収できなくて悪循環とか。風が吹いたら桶屋が儲かる、ではないが体が硬いと血管にも悪影響が出るそうで、何かが起因となってどの部位において、どういう反作用が起こるか測り知れないようだ。随分と症状が緩和したとはいえ狭心症を抱えている自分にとっては大きな問題なのかもしれない。

 ならば、始めよう。毎日少しだけ軽い運動を続けてみよう。空いた時間で簡単で費用も発生しないし、いい事づくしでお得じゃないか。それを1日のルーチンメニューに組み込んで習慣化すれば面倒臭くならないはず。隙間学習に似ているではないか。まずは朝のNHKのラジオ体操から始めよう、と考えたのだ。2月続けば習慣になったと判断し、夜のストレッチを追加。それも続いたので今度は軽い筋トレ。これ以上増やすと時間の捻出が大変なのと、自らに課せる日々のメニューがどんどん増えていく状況なので、この辺りが量として捉えると妥当な線かと。

 朝6時15分にアラームをセットし飛び起きる。もう少し、あと3分だけ布団の中に、とかグダグダ考えない。とにかく起きる。長い小便を済まして、コップ1杯の水を飲む。寝ている間に不足した水分補給と胃腸に起動の命令みたいなもの。おらっ起きろ。テレビを点けるとまだリトル・チャロとか中国語とかやっている。その間に体をゆっくり伸ばす。この頃になってようやく意識が出始める。ほとんど眠っている状態で体だけ動かしているのだ。6時25分から35分までのたった10分間だ。朝はこれだけ。というか、これぐらいだから続けられる。で、朝抜きはもうしない。朝食はしっかり取る。もう最近はバナナとかヨーグルトまで朝から食う。夜は夕食を済ませて、家族の団欒中とかテレビを観ながらとか、そんな隙間のながらで充分ストレッチが出来る。ゆっくり時間をかけて呼吸に意識して伸ばしていく。

 続けてみると変わったことが色々ある。ご飯が美味しく感じる。夏になって暑くなって暑さに対する耐性が少し上がった。夏バテとか汗がベタベタするとかシャワー浴びたいとか、そういった夏とか汗とかに対する「鬱陶しい」とか「しんどい」という負のイメージがなくなり、流れるサラサラ汗が気持よく感じられるようになった。多分、視点が変わったのだと思う。結果、今のところ毎年酷い夏バテで食欲不振になるとかフラフラするといったことが無い。こういうフィードバックとして自ら実感出来ると長続きするのかもしれない。

 笑ってしまうぐらい体が硬くて曲がらなかったが、少しだけ柔らかくなってきた。でも、まだまだ全然硬いと思うが。階段の登り降りも楽に感じる。去年の今頃、狭心症での検査入院前後では階段の上りは恐怖以外の何者でもなかっただけに随分改善された。肩こりの方も少しましになった程度でまだまだこれからだろうと思う。

 腕立て伏せも先月からメニューに追加して、最近はダンベルも取り入れた。まあ、元が痩せぼっちなんで、イケてる中年マッチョマンにはなれそうもないので見た目は諦めるとして、少しぐらいの筋力アップは望めそうだ。とにかく、気長にやるつもりだ。

 だってね、そんな7〜8ヶ月足らず頑張ったというだけで、散々今までサボって放おっておいて少しやったぐらいで劇的に何かが変わるわけがない。美しい体を手に入れたい、痩せたいと願う人が飛びつく簡単なんちゃらダイエットとか嘘ばっかりだから辞めといたほうが良い。それで痩せた人は他の部分で何かが変わってるんじゃないかな。そう、視点が変わったとか。

 冒頭で述べた空が綺麗に見えるのも、体調が良くなって精神的な部分が太くなって、意欲的で前向きになった状態がそうさせているのかもしれない。

【今回の体験から得ることができた教訓。】

  • 人は体を動かさないと駄目だ。
  • ご飯はちゃんと食べる。その食べたもので体は作られている。
  • 他者を変えることは出来ないが、自分は変えることが出来る。

【おまけ写真】
よく似たアングルの写真発見。綺麗な日本の夏空とは対照的な北京の空。訪れた時期が悪かったのか、たまたまだったのかもしれないが、これは酷い。実際に喉も痛かった。