多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

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コアジサシの繁殖地と猛禽類

コアジサシは絶滅が危惧されている野鳥の一種で、大阪府ではレッドリストの絶滅危惧 II 類に位置づけられています。環境省は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」で国際希少野生動植物種に指定し、専門家からなる検討委員会が開かれ、コアジサシの繁殖地の保全と配慮に対する指針を公表しています。

繁殖環境となる砂浜や河川の中洲などの減少が著しい中、20数年前あたりから関西国際空港の周辺の埋め立て地において、コアジサシが繁殖地として飛来する個体数が増加してきているようです。

第二期空港島が陸地化した2003年の関西国際空港(株)建設事務所の調査発表では2400羽の飛来が確認されたとあります。空港周辺の人工的な埋立地の未利用地においては充分な広さがあり、かつ人間の出入りも制限され、周辺海域に豊富な餌場があるためコアジサシにとって良好の繁殖地となって飛来する条件がそろっているそうです。

ここまで話すと営巣、繁殖地が確保できてよかったとなるのですが、残念なことに別の問題が浮上することになるのです。旅客機の機体やエンジンに衝突するいわゆる「バード・ストライク」の発生件数が増え始めたのです。

関西国際空港において野鳥によるバードストライクの発生件数は年間にして30件から40件もあり、その過半数が南半球から飛来するコアジサシだということです。エンジンに損傷を与える重大事故に繋がるかもしれないということから、運営側としては危険回避の対策としてコアジサシが安全に繁殖活動が行える、人工的に用意した代替え地への誘導を促したいと考えました。しかし、生物多様性を重んじる、先にも上げた絶滅危惧種の鳥獣に指定されているということで、卵や雛を捕獲し営巣地に移動することが出来ないので打つ手がないというのです。

昨年、このバードストライク問題に関して、かなり有効な手段があらわれたことを記事で知りました。それが、コアジサシにとっての天敵になりうる猛禽類のタカやハヤブサ、猟犬などを鷹師の協力のもとで人為的に放つことで営巣時期に空港周辺に巣を作らせないというものでした。こういった天敵を配することで航空機の発着箇所から離れた安全な場所へ誘導できるのでは、ということなのでしょう。

実はこの対策が功を奏し、昨年に発生したコアジサシが原因となる航空機へのバードストライクはわずか2件にとどまったというのです。繁殖数も3000羽を超えていたものが十数羽まで減少したそうで、絶大な効果を発揮したそうです。

もちろん、猛禽類も猟犬も野生に放たれたのではなく、専門家の指導と管理のもと警告行為となるよう同行、巡回させたというのですから、それらがコアジサシを捕食して数が減少したというわけではありません。

つい先月の4月に今年もこの猛禽類と猟犬による警告を促す空の安全活動が行われているということです。

先日また別の自治体での行われた実験も興味がありました。街の中に増え続けているカラスが朝出されたゴミを漁って散らかしてしまう問題。また同様に増加傾向にあるドバトの糞害などにおいても、鷹師にお願いして猛禽類に威嚇行為をさせるというものでした。

やはりこちらも効果があるようでした。黄色い目玉のバルーンやキラキラ光るコンパクトディスクをぶら下げても、賢いカラスはすぐに慣れてしまい驚かなくなる一方、猛禽類に対してはカラスやハトは本能的に恐怖感を抱くのでしょう。

最近では大阪市内でもタカなどの目撃情報や撮影された写真の掲載もあるようですし、大変興味ある取り組みなので今後も注目し続けたいと思います。