多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

Botanical Garden

Botanical Garden

記録的な暴風と活発な雨雲を伴い、最強と呼ばれた台風21号がやってきました。
非常に強い勢力を保ったまま上陸するのは25年ぶりだそうです。

大きな街路樹が倒れて道を塞いでいる。信号機が90°回転してしまっている。
自身でもこれほど強い台風ははじめてのことでしたし、翌朝仕事に向かう途中で被害の大きさに驚くばかりでした。

しかし今年は天災続きでした。6月にはここ大阪で震度6弱を記録した24年ぶりの大地震が発生。後に大阪北部地震と名付けられました。7月には西日本の広範囲を襲った記録的な豪雨が続き、200人以上の尊い命が犠牲になった西日本豪雨がありました。続く8月、大阪では17日連続の猛暑日が続き71年ぶりの最長記録更新。そして今回の台風です。

自然に触れたくて足繁く通うようになった植物園。

・・・あのメタセコイアの森は台風でどうなったのだろう。・・・

たしか今年の春、その森はホトトギスのさえずりを響かせていた。そういえば、夏のヒマワリの咲く時期からもう一月以上経ち、しばらく行っていないことに今さらながら気づき、ふと被害の状況が気になったのでネットで調べてみました。多くの立ち入り制限区域が設けられているようですが開園はしているようです。おそらく衝撃的な状況なのは容易に想像がつきますが、久しぶりにカメラを持って訪れました。

去年の9月にも大きな台風でアカマツなど何本も折れて大変なことになっていましたが、今回はそれを上回る何倍もの規模で被害が出ているようです。悲惨な状況です。時間をかけて育んだものが失われた悲しさが、そこにはありました。

メタセコイアやマツ、ユーカリなどの空高くそびえ立っていた巨木の多くが根こそぎ、あるいは地上1メートルぐらいから有ろう事か折れてしまっている。だいぶ伐採も進んでいるようですが、管理運営をしてきた職員さんたちのほうが、胸をえぐられるような思いだったに違いありません。

これだけ木が倒れると、悪い意味で明るくなった印象を受けました。そこに確かにあった実態を伴った自然が希薄になった、というべきでしょうか。もともと森などは表層となる樹冠に葉や梢が茂っていますが、中身はがらんとした空間でしかない。それが、顕(あらわ)になったというか、屋根を剥ぎ取った建物のようです。

まだまだ、倒木の撤去処理が追いつかないようで、あちらこちらにうず高く積み上げられた丸太の山が、もう何個分できるかわからないぐらいになることでしょう。

紫陽花園やあの小池の辺りの静かで落ち着いたお気に入りのベンチに行くこともできません。

それでも自然は健気に四季の移ろいは途切れることなく静かに色づき始めているようでした。ハッサクの果実が大きくなっています。キビタキのメスとの出会いもありました。秋の花々にチョウがやってきています。ハギやダリアが咲き始めていました。万葉のみちは封鎖されていました。

でも、倒木の撤去が進み、折れた枝の剪定されていくとなると、森がその密度を落とし中身が今以上に見えるようになってしまう。そうなると、もはや今までの環境とは異なる状況がそこに生まれることになり、鳥をたちは住処や身を隠す場所をかなり失ったということになる。

それがどれ位影響を受けるのかはわかりませんが、もとの自然に戻るまでには莫大な費用と時間と、復旧を目指す職員の方たちの多くの労力を要することになり、これは決して簡単のことではありません。

私達は自然災害という猛威に対し、為す術もなく、ただ受け入れるしかできない。そんなことをテレビや新聞などの報道を通してではなく、こうして身近に起こってしまった現実をみることでリアリティーを持った実感として気付かせられた、そんな台風でした。

あれから1ヶ月以上経ち少し忘れかけていても、街のいたるところに点在し、今もなお手付かず状態で放置された残骸に刻まれた爪痕に、凄まじい破壊力を持った自然の脅威と、その反対側にある自然の脆さや儚さを感じずにはいられません。