多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

差し歯が抜けてマヌケ顔

突然というか、やはりというか前歯の差し歯が抜けてしまった。

よく、そんなふうな夢を見る事があって、自分の歯がボロボロ割れたり抜けたりして慌てて目が覚めるのだ。その話をすると案外似た夢を見る人はいるようで、慌てふためき狼狽える感覚が理解できるもの同士、心が通う和やかなおしゃべりが弾んだりするものなのだが。だがしかし、悪い夢のようではあるがこれは夢ではなく、和やかでもなく穏やかでない。

それも一度に二本分が繋がった差し歯が抜けたものだからたちが悪い。あわてて鏡を覗き込み肩を落とす。ああ。あゝ。がっくりしょげて、げっそりへこんで意気消沈。そう・・・失ってみて・・・初めて気付くぅ・・・みたいな、そんなものではないのだけれど。何より鏡で自分の笑顔を直視できないぐらい酷い顔なのだ。なんかこう、込み上げるような・・・笑い。いや笑えない。

歯抜けの間抜けで笑えない。

そう、笑い事では済まない気持ちが溢れんばかりの溺死寸前の僕に対して、手を差しのべるどころかこぞって薄笑いを浮かべる娘たち。家内からもここぞとばかりに、老け込んだ可哀想な猿でも見るように鼻で笑われてしまい、言葉なくうなだれる僕。

人間、前歯が二本あるか無いかだけでこうもお顔の印象が極端に変わってしまうとは。前歯ごときとあなどってはいけない。まさしく歯牙にもかけない事だった。

一夜明けて行きつけの、というのも可笑しいが、掛かり付けの歯医者に電話して治療というか復元を無理やりねじ込んでもらった。とりあえず応急処置ということで持ち込んだ差し歯を利用して処置して頂いた。幸い日曜日に診察しているクリニックなので本当に助かった。

帰宅後、家族の皆が気にかけて(なんだ治るのか)、心配してくれた(面白がっていた)ようで。満面の笑みと共に応急処置(その場しのぎの間に合わせだな)を施した歯を見せたら、「よかったねえ。」(しばらくあのままでよかったんじゃない)と言ってくれた。



今日の一枚・・・

診察に向かう階段で現在建設中の「あべのハルカス」を撮影。歯の治療後に近くまで見に行ったのだが、現在38階まで建設が進み、地上から193メートルまで到達したと表示されていた。最終的には300メートルに達するということなので全体の2/3の高さまで出来ていることになる。巨大建造物など単純に大きいということで、ただそれだけで何処となく意味もなく怖さがあり、これは巨大物恐怖症みたいなものなのだろうか。