多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

アザミの刺

ここは植物公園内。大阪の何万、何百年前の原生林が再現された氷期植物群を歩いている時でした。退館時間のアナウンスが流れ、陽もだいぶ傾いた時間です。行楽に訪れた人々も出口に急いでいる頃でしょう。正面ゲートから最も遠いこの辺りはもう誰も人はいません。その薄暗い林に急に強い光が射したかと思うと、鮮やかなピンクの花が目に入りました。アザミです。

ちょっとありえないぐらいトゲトゲしているコブがあり、葉もまた刺があります。小さい頃、この刺に触らないようによく注意されました。鋭利な凶器をむき出しにした、この過激な装備で身を守る徹底ぶりは、少しやり過ぎという気もします。それでも武装してまでも動物の接触をかたくなに拒み、種子を守る強い意志のようなものを感じます。

うっそうとした原生林に覆われた中にあり、まばゆく光るピンクの花とその刺がとても美しく、時間のことを忘れてしばらく眺めていました。