多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

Made in Japan

今年も、もう少しで終わり。この仕事を続けて早20年になる。

設計事務所に務めていると世の中の様々な機械や商品に携われるのが非常に面白い。今までそんなに気にかけていなかった物は、実はこういうふうに機能していて、だからこの形状でこうやって形を決めて・・・と言ったように思いがけない理解とか形とかに出会える。

今年に入ってガラスの食器や照明を形状検討や設計をしたり図面を描くことが多かった一年だった。何が面白いかというと、試作を繰り返して徐々に形が決まっていく、その過程が何よりも興味深い。設計段階だったり成形段階で形がうまくできなかったりして、少しずつ形状変更して最終形状が決まって行く。

デザイナーではないので造形力とか企画力は余り持ち合わせていないが、ラフな基本形状さえあれば素敵な仲間のいる今のチームで、ディスカッションしたりユーザーの要求をまとめたり、(モックアップとまでは言わないが)粘土こねたり、類似形状品を店で見て廻ったり、加工検討したり・・・。こういう、積み重ねはちっとも苦にならないし時間はあっという間に過ぎてしまう。

かえって、最終段階に近づくと「もう少し、やっていたいのに。」と少し寂しく思ってしまったりもする。多くの人が携わって、その僕は一部を任されただけなのに、「自分が作った」と思ってしまうのは、設計者の悪いところなのかもしれない。いつも設計が終わり形となった完成品を見ると思うことがある。

無駄な装飾を省き機能性を重視した結果に必然とした現象として現れる機能美であり、それが今まで設計してきた重厚で巨大ななプラント設備だったり、ボンネットを開けた時に現れるエンジンと呼ばれる機械の内蔵だったり、今回の食器だったり。けっして造形を計算に基づき導き出したわけではない。


ハリオグラス・V60ガラスドリッパー02・レッド