多弦楽器の暴奏

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

心よりいず、願わくば再び心に至らんことを

アシナガバチの造形力

アシナガバチの造形力

アシナガバチが巣作りに励んでいます。越冬を終えた女王バチがこうやって巣作りをして産卵をして羽化し、そして成長を遂げたハチが働きバチになり巣を拡張。そして産卵を繰り返しどんどん巣も大きくなりハチも増えていく。

しかし、最初はこの女王一人で巣作りから幼虫の採餌や世話など一切合切すべてやっているんだなあと思うと、後に現れる働きバチ(あろうことかすべてメス)よりも働き者です。

巣の素材はというと女王バチが木をかじって口の中でクチャクチャ噛んで木の繊維質と唾液と混ぜたもので、それを口から出してあのいわゆるハニカム構造と呼ばれる巣を築きあげていきます。

もちろん設計図はありません。学習することなくあの複雑な構造を造形していく行動は、そうするように遺伝子に組み込まれているということなのでしょうか。本能という言葉だけでは説明がつかない。カッコウの托卵やビーバーのダム作りなど興味深いです。リチャード・ドーキンス博士は「遺伝子の延長された表現型」という考えを著書である「利己的な遺伝子」で書かれています。

正六角柱を隙間なく配列させた三次元空間充填した構造を持つ巣。限られた空間を最も効率よく少ない材料で構築でき軽量化を図り、それでいて強度も保てる。鮮やかで妙技ともいえるハチの建築技術と造形力は深遠な自然界のデザインの淵を覗いた気がするのです。

営巣の製作工程を見ていると、六角形の育房室をひとつひとつ順番に作り上げているわけではないようで、部分部分を少しづつ作り上げているように見られます。裏に回って接合部を気にしたり、各部屋の修正をしたりしている様子をうかがえました。

複雑な構造の巣をひとりで築き産卵をし、幼虫の羽化後は狩りと餌やりの毎日。風雨をしのぎ、天敵のスズメバチから幼虫をひとりで守る女王バチの営み。人に見つかって駆除される時が来るかもしれないと思うと複雑な気分になります。

※後日談

二週間後に同じ場所に訪れ、巣の様子を見に来たのですがその姿はありませんでした。人為的に駆除、撤去されたと思うのが妥当でしょう。大変残念でした。